2005年12月30日

(by paco)進化論に対抗し、神の「知的計画」

Global Eyes

(by paco)「ID」論というのを知ってますか? 神の知的計画、と訳されます。何のことやら、という感じだと思いますが、米国で、以前から、そしていま堂々と検討されている世界観です。

米国は科学の国と思われがちですが、ところがどっこい、とっても神学的、宗教的な国でもあります。何しろ大統領の就任には「神に向かって宣誓」があるし、そもそも建国したのは、イギリスにいた清教徒(ピューリタン)で、離婚を認めるなど堕落した英国国教会に嫌気がさし、本来のキリスト教徒たらんとした宗教心旺盛な人々が、新天地を求めて新大陸に渡り、建国したのが米国なのですね。資本主義の総本山の米国ですが、資本主義はキリスト教のプロテスタントから生まれた思想で、人間が禁欲的に労働し、それによって蓄積された富を神に捧げるという考え方から発展してきました。原理的に言えば、資本主義でもうけを出すことは神に仕えることで、米国はとっても神様と仲良しの国なのです。

口の悪い人は、資本主義は人間が持っていた富を資本の原理でかき集め、集めた富を神に捧げるシステムで、それ故に、資本主義が発展するほどに、神は豊かになり、人間は貧しくなる、という人もいます。まあこの話は現実に対してちょっと無理がある感じはありますが、一面の真実をとらえていると思います。

さて、そういう米国なので、米国にはキリスト教原理主義(原理主義はイスラムの特権ではありません)と言われる人たちがいて、いまのブッシュ政権は彼らが支持母体です。キリスト教原理主義の立場から見ると、ダーウィンの進化論はまったく許せない邪悪な説なのです。人間は下等生物から進化したとされますが、それでは神の意図はまったくなく、神が万物を創造したとか、人間だけが神に似せてつくられた特別な存在という聖書(特に旧約)の世界観とは矛盾しているのです。

で、米国では進化論を学校で教えるなという運動が以前からあり、実際に教えていないところもあるほどですが(万物は神に創造されたと教えているのかな)、ブッシュ政権下で勢いを増す原理主義者たちは、本格的にダーウィンの進化論を打ちのめすアイディアを考え出したわけです。これがID(知的計画)です。

進化は認めましょう、でも進化がいまのような進化の道をたどり、人間が生まれたのは、神があらかじめ計画していたのよ、というのがIDなのですが、もちろんその根拠はまったくありません。信仰です。それを学校で教えようという動きが起きていて、ブッシュ政権下なら実現しかねない勢いでしょう。

こういう動き自体を、神がかり的な非科学的な思想だと片付けることは、じつはできません。科学の知見の方が正しいと言うこと自体、信仰に近いし、しばしば「科学絶対視」「科学信仰」などと呼ばれて日本でも批判されます。科学がものすごく進歩すれば、地球のことも人間のことも、多くの問題が科学によって解決される、いま解決できないのは科学が未完成なせいだ、と考えるのも、根拠のない信仰に過ぎません。進化論も仮説に過ぎず、仮説を裏付けるものもあれば、矛盾するものもあります。しかし、多くの科学的な(生物学的な)知見が、進化論を支持しているのも事実です。

そもそも科学自体、教会で議論されてきたもので、ルネサンス初期の科学者(コペルニクスやガリレオなど)は、教会を批判しようと思った意図はまったくなく、神のことを知ろうとして研究していました。全知全能の神が天体をつくったのなら、恒星の動きと惑星の動きがこんなに矛盾するのはおかしい。恒星はきれいな円を描くのに、惑星は行きつ戻りつしたり、円を動かない。神がつくった運動はもっときれいに説明がつくはずだと考え、天動説の矛盾を克服し、シンプルに説明できる地動説に行き着きました。地動説こそ、神の意志を説明できるとコペルニクスもガリレオも考えたわけです。でも、それが、当時天動説を絶対視する教会の怒りに触れて、科学は教会の敵になった。教会の矛盾を暴露する、光を生む装置として理解された。これがルネサンスですね。でもここで注目すべきは、科学が照らし出したのは「カトリック教会の闇」であって、「キリスト教神学の闇」ではないのです。新教徒たち(ピューリタンを含む、宗教改革者=プロテスタント)は、カトリック教会は批判しても、科学が神の意志を明らかにする道具であることは、認めていたのです。科学は、いずれにせよ、神のことを知るための望遠鏡として機能してきたわけです。

そう考えると、ID論が出てくる理由がよくわかります。ダーウィンの進化論も、神のことをもっとよく見る(知る)ためのメガネだったはずなのに、かえって神を否定している。それは間違ったメガネだ、と考えることは自然なことです。目的が、神にあるのですから。

そんなわけで、ID論はいま米国の知識層や資本家層まで含めた賛同を獲得しつつあるのですね。もちろん、それはいくらなんでも強引すぎる仮説だ、いまさら神の意志を見いだすなどという目的は、前近代的に過ぎると考える人たちも、米国にもたくさんいます。でも米国は、そのような「米国人らしい(と僕らが考えそうな)」人たちだけの国ではないのです。

ちなみにキリスト教原理主義は、旧約聖書の万物創造を支持していることからもわかるとおり、キリスト教というより、ユダヤ教に近い。旧約聖書はもともとユダヤ教の聖典で、キリスト教はそのユダヤ教の宗教改革から生まれ、新約聖書を主な聖典、旧約聖書を従たる聖典を位置づけていますから。で、キリスト教原理主義者はユダヤ教原理主義にも近く、米国は伝統的にイスラエル支持、特に「ブッシュ政権は強いイスラエル支持という観点が生まれてくるわけです。

ふう〜ざっくり書こうと思ったら、やっぱりけっこうたくさん書いてしまいました。駆け足だったので、わかりにくいところ、あれれ、間違えちゃった?ところもあるかもしれません、指摘していただければと思います。

▼元ネタ
進化論に対抗し、神の「知的計画」 米で影響力増すキリスト教原理主義

 ブッシュ米大統領が最近、キリスト教原理主義者らが唱える「知的計画(ID)」を、ダーウィンの進化論とともに公立学校で平等に教えるべきだと発言、波紋を呼んでいる。知的計画は、地球上の生命の誕生には、創造主の力が働いていたとするもので、多くの科学者が認知している進化論とは、大きく内容が食い違う。大統領の政権与党、共和党リーダーであるフリスト上院院内総務も、大統領を支援する形で、ID教育に賛成の意向を表明するなど、ID推進派の力が勢いを増す気配だ。(ベリタ通信=エレナ吉村) 
★詳細はサイトでお読みください。
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200509011401484


投稿者 paco 00:40 | コメント (0) | トラックバック (0)

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.chieichiba.net/mt/mt-tb.cgi/50

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)