2007年06月24日

(by paco) 沖縄戦の、歴史のねじ曲げ

Global Eyes

(by paco)この国は、相変わらず自分たちの過去が見つめられずにいるのですね。

沖縄戦で、日本軍が市民の集団自決を命じたという事実を、文科相が教科書から削除させたということで、沖縄の人たちが怒っています。詳しくは、以下の記事を見てください。

ではなぜ、行政や政治にかかわる人たちは、こんなことをいまさらするのでしょうか? 60年以上も前のことだから、別にどっちでもいいじゃないと思うあなたは、歴史が今に生きているということについて、改めて考えてもらうきっかけにしていただければと思います。

なぜ今、沖縄戦の記述を、事実をねじ曲げてまで変更しようとするのか? それは、沖縄戦で軍の指揮官だった人たちの遺族に対して、政治的にこびることを意味しています。

軍の指揮官たちが市民に自決を命じたということは、自国の市民を守るはずの軍が、自国の市民を進んで犠牲にしたということを証明する事実です。これは軍人として不名誉なことです。その不名誉が教科書に記述されて子どもたちに教えられるということは、沖縄戦にかかわった軍人の不名誉がずっとそのまましたの世代に受け継がれることを意味しています。

軍隊に入って死んだ人たちの遺族は、死者(軍人)が「名誉ある死」をしたと信じることで、その死を受け入れることができます。国を守るために死んだのだという名誉があるから、その死を受け入れられるし、国を大切にする気持ちを維持することができます。もし軍人としての死が「不名誉なし」「犬死に」なら、その不名誉なしを命じた国家に対して、反感を抱きます。そしてそれは、かつての軍隊だけでなく、今ある軍隊の士気にもかかわります。軍(国)の命じるままに行動すれば、正義の行動ができ、名誉が得られると思えば、軍人は危険を賭してがんばり、軍人の家族はそれを受け入れます。しかし国(軍)が、不名誉で無意味な命令をすると疑えば、命令に服従することができず、反逆(謀反)の気持ちが強くなります。

沖縄戦の歴史を隠すのは、戦前の日本軍が「間違ったことをしていない」ということを主張するためであり、それによって戦死した軍人の遺族の名誉を守り、家族が戦死したにもかからず政府に服従するという構造をつくることができます。また今の自衛隊員に対しても、政府の言うとおりメレ意に従えば名誉が得られるというメッセージを発することができます。教科書は、こういう政治的な意図のもとに改変されます。

その一方で、沖縄戦で死んだ市民の遺族はどうか? 軍人の命令で自決させられたとすれば、死ななくてよかったのに死んだことになり、無駄死にになります。教科書で「沖縄では軍人が市民を無駄死にさせた」と記述されれば、死んだ市民の遺族は、無念の思いで死んだ家族の思いをはらすことができ、安心します。そして今度戦争があっても軍にやすやすと従うなというメッセージをしたの世代に伝えることができます。

記述の削除はほんのわずかな文言ですが、社会的には大きな意味があるのです。

その意味では、冒頭僕が書いた「自分たちの過去が見つめられずにいるのですね」というのは実は不適切で、「過去をしっかり見つめているからこそ、意図的に、記述を変更した」と言うべきだということがわかります。

中国や韓国をはじめとするアジア諸国の人々が、日本の歴史教科書の記述に注目するのも、同じ理由です。どのように記述するかは、決してあいまいに決めているのではなく、かなり目的を持ってねらいを実現するためにおこなわれます。「日本はいつまで反省を続ければいいんだ!」と起こる人がいますが、反省をやめるということは、それに対応するメッセージを、国内、海外に向けて強く発信することを意味しています。単に反省するとかしないとかではなく、国としてどのような姿勢をとるのかの明解なメッセージが、そこにこめられているからこそ、国内外の多くの人が注目するのですね。

僕個人は、国にしろ軍にしろ、命令されて何かをするなんて、それ自体まっぴらで、まして死ぬなんてとんでもないという人なので、そういう立場を伝えるためにこの話題を書いているのですが、歴史教科書の記述と、政治的な意図は切っても切れない関係にあるので、ぜひ注目してください。


▼asahi.comより
────────────────────────────────────
集団自決巡る検定意見、全会一致で撤回要求 沖縄県議会
2007年06月22日15時19分

 高校生の日本史教科書の検定で、沖縄戦の際に日本軍が住民に集団自決を強制したと取れる記述が削除された問題で、沖縄県議会(定数48)は22日午前、検定意見の撤回と記述の回復を求める意見書案を全会一致で可決した。意見書は集団自決について、「日本軍による関与なしに起こり得なかった」としている。あて先は首相、文部科学相などで、議員団が同日上京し、要請する。

 意見書は、文科省が集団自決について「日本軍の命令があったか明らかではない」「最近の研究成果で軍命はなかったという説がある」としているのに対し、「日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実であり、今回の削除・修正は体験者による数多くの証言を否定しようとするものである」と反論している。

 そのうえで、「筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた県民にとって、今回の削除・修正は到底容認できるものではない」と批判している。

 意見書を巡っては、野党側は当初、集団自決には「軍の命令・強制・誘導」があったと明記するよう要求。これに対し、自民党が「軍命はなかったとの証言もある」などと難色を示した。だが、県議会として検定意見の撤回を求めることを優先し、「日本軍による関与」との表現で与野党が折り合った。

投稿者 paco 03:01 | コメント (0) | トラックバック (0)

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.chieichiba.net/mt/mt-tb.cgi/687

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)